脱原発と工業文明の岐路

3・11以後の歴史的転換についての哲学的なアプローチ。工業文明と科学技術、低線量被曝、自然観の再検討、脱工業社会などを考察。

著者 岩佐 茂
高田 純
ジャンル 哲学・思想・心理
出版年月日 2012/08/06
ISBN 9784272430925
判型・ページ数 4-6・272ページ
定価 2,640円(本体2,400円+税)

「ポスト3・11」がもたらす歴史的転換についての哲学的なアプローチ。近代工業文明に対する問い、科学技術と政治思想、低線量被曝をめぐる論点、自然観の再検討、日本人の「美徳」や伝統思想、脱工業社会における共同など、多角的に考察。

序論 哲学は三・一一をどう受け止めるか
 1 文明論的アプローチ
 2 揺さぶられた工業社会
 3 工業社会と工業文明の哲学的批判
 4 文明の破壊から創造へ
 5 原発依存社会の転換を妨げるもの――ドイツとの対照
 6 本書のみとおし

第一部 ポスト三・一一の文明論的意味

Ⅰ ポスト三・一一の文明史的射程(高田)
 1 天災と人災
 2 三・一一と九・一一(岩佐)
 3 アウシュビッツ以後とヒロシマ以後

Ⅱ ポスト三・一一で問われるもの(高田)
 1 三・一一への文明論的アプローチ
 2 三・一一の文明論的議論
 3 三・一一の文明的課題

Ⅲ 近現代と工業社会(高田)
 1 近代と現代を区別するもの
 2 これまでの近代批判――反近代と「近代の超克」
 3 ポスト・モダン
 4 近現代を超えるもの――脱工業社会をめざして

Ⅳ 原発依存と工業文明の転換(高田)
 1 工業社会と工業文明
 2 資本主義と工業文明
 3 資本主義と原発依存
 4 原発依存の日本と原発神話

第2部 問われる原発依存

Ⅰ 福島原発事故から見えてきたこと(岩佐)
 1 「安全神話」の虚構と呪縛
 2 なぜ原発に固執するのか
 3 自然エネルギー一・一%の謎
 4 脱原発をめぐるせめぎ合いの構図
 5 「原子力は人類と共存できない」をめぐって
 6 反原発は反科学主義か

Ⅱ 放射線被曝下における生活(岩佐)
 1 パニックを恐れた政府――その甘い判断の根拠
 2 ICRPの基準値の歴史的変遷
 3 ICRPの立ち位置と考え方
 4 人権の思想に立脚し予防原則を重視するECRR
 5 生活のための経済か、経済のための経済か
 6 倫理の問題としての脱原発

Ⅲ 原発事故は「想定外」か(高田)
 1 「想定内」と「想定外」
 2 確率論の落し穴――「確率論的安全評価」は信頼できるか
 3 巨大津波は「想定外」か
 4 原発の損得勘定
 5 「リスク社会」と放射能

第Ⅲ部 問われる科学・技術

Ⅰ 自然観の見直し(高田)
 1 自然の恩恵と脅威
 2 「自然の支配」の意味――ベーコンとデカルト
 3 工業社会における「自然の支配」
 4 日本人の生活知・民俗知

Ⅱ 科学・技術の意義と限界(高田)
 1 問われる科学・技術
 2 科学の予見と技術の制御――科学・技術は神わざか
 3 複合技術の制御――魔法使いのおろかな弟子
 4 自然観と哲学の再建

Ⅲ 科学・技術はどこまで制御可能か(高田)
 1 科学・技術の疎外の告発
 2 科学・技術の巨大化と制度化
 3 科学・技術の中立性をめぐって
 4 科学・技術の制御と民主主義
 5 原子力平和利用の三原則をめぐって

第四部 問われる工業文明

Ⅰ 疎外された近現代の工業文明(岩佐)
 1 工業化を推進してきた産業技術の発展とその疎外
 2 工業社会を支えてきたエンルギーの破綻
 3 工業化による市場のグローバル化と生活様式の近現代化
 4 工業化の進展にともなうリスクの増大
 5 資本の論理に適った利便性・効率性の価値観
 6 近現代の産業技術を支えた「自然の支配」の観念

Ⅱ 原発と国家資本主義(高田)
 1 原発コネクション――戦後日本の縮図
 2 基幹産業としての原発産業
 3 マスコミと学会の御用化
 4 原子力国家と災害資本主義
 5 原発事故と新自由主義
 6 政界のメルトダウンとファシズム
 7 国防とはなにか
 8 震災復興と脱工業社会の課題

Ⅲ 脱原発・脱化石燃料の工業社会――環境・エネルギー革命(岩佐)
 1 課題としての脱原発・脱化石燃料
 2 環境・エネルギー革命――もうひとつの工業文明
 3 自然と調和した新たな工業文明への展望
 4 人間と自然の関係の制御と共生の価値観

第五部 脱工業社会における共同

Ⅰ 新しい共同をめざして(高田)
 1 絆の哲学的考察
 2 「情けは人のためならず」の意味
 3 社会連帯と相互承認

Ⅱ 個人主義の再考察(高田)
 1 日本人の美徳をめぐって
 2 日本の伝統思想と間柄
 3 リバタリアンとコミュタリアン
 
Ⅲ 脱工業社会の思想的課題(高田)
 1 工業社会の思想
 2 工業社会における個人主義の変質
 3 マルクスの工業論の射程
 4 アソシエーションと相互承認

おわりに
 1 脱工業社会の生活と思想をめざして
 2 人権をないがしろにする原発からの撤退を――岩佐から読者へ
 3 産業のエコロジカル化と共同社会に向けて――高田から読者へ

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