あきらめない映画 山形国際ドキュメンタリー映画祭の日々

“アジア初の国際ドキュメンタリー映画祭”として知られる〈ヤマガタ〉。その「熱」の秘密を、臨場感とユーモアにとむ筆致で綴る。

著者 山之内 悦子
ジャンル 芸術・文学
出版年月日 2013/09/27
ISBN 9784272612291
判型・ページ数 4-6・288ページ
定価 本体2,000円+税

“アジア初の国際ドキュメンタリー映画祭”として1989年から隔年開催されてきた〈ヤマガタ〉。同映画祭に通訳者として初回から参加しつづけている著者が、ヤマガタのはらむ「熱」の秘密を、臨場感とユーモアにとむ筆致で綴る。

【推薦】
「山之内悦子のヤマガタへの愛は、怖いほどに気高く、時に挑発と痛快の雑居であり、そして、計り知れないほどの優しさに満ちている。異文化間コミュニケーションを繋ぐ、いや、紡ぐ通訳者の物語は優れたドキュメンタリー映画そのものだ」――崔洋一(映画監督) 

まえがき 行かずにはいられない

第一章 ヤマガタという磁場
 山形国際ドキュメンタリー映画祭とは
  この祭りはこんなふうにできている/名が表す体/始まりと継続/山形市が映画の町になる一週間
 ヤマガタまでの人生
 映画祭の通訳
  コンペへの道/勝負の半分は楽屋で決まる/嬉しいリレー通訳/エリカ・クレイマーさんが血相を変えて飛び込んできた/通訳者は泣いてはいけない……のだろうか/ヤマガタでは通訳者も人間であってよい/今のジョークは通訳不可能ですが、どうか私と一緒に笑ってください/通訳とドキュメンタリー作りは似ている/私たちは本当にわかり合っているのか
 ヤマガタに集う人々
  たとえば河瀬直美監督にとってのヤマガタ/頼もしく成長する親戚の若い衆/やるべきことをやってきた人の穏やかな威厳/ドキュメンタリー監督とはどんな人たちなのか
【誤る通訳者】あ~あ、失敗したあ

第二章 ヤマガタの仲間
 監督篇1 気遣いの人 一番古い友達:小林茂監督
  その友達は橋の下で寝ていた/屋根の下に昇格したものの酷評される/『阿賀に生きる』は大きく成長し認められた/ドキュメンタリー製作とお金とは仲が悪い/カメラマン小林茂はいかにして監督になったか/ かけがえのない仲間、小林さんからの贈り物
 監督篇2 知らせずにおくものか 一番新しい友達:早川由美子監督、土井敏邦監督
  共通点の多い二人/石牟礼道子のような筆力がないなら映像でいこう/今の方向で頑張っていってもいいんだ/居候暮らし、部活、ボンネットに飛び乗るのも厭わず/どこかで断ち切らないと何も変わらない/賞のスポンサーであるスカパーとの交渉を発表する/自分ができること、やるべきことを続ける/「おまえはこう生きられるのか」と自問しつつ撮る/ヤマガタのコンペ上映作を批判する度胸/自分のために作っていること、ハゲタカであること/飯舘村に行くまでの逡巡/映画祭の評価に一喜一憂している僕らは何なんだ?
 ボランティア・スタッフ篇 まず地元の人間が中心になって映画祭をやりきろう:縁の下の五人のヒーロー
  小川伸介監督にちょっと言われてばーっと走って/天安門事件の四カ月後の空席/世界が激変した年にヤマガタは誕生した/『デイリー・ニュース』と編集長の不安/「営業の宮沢さん」は面白い人たちと会ってきた/東北芸術工科大学の幸せ/コンペ上映作品は一体どうやって選ばれるのか/選考する側の全人格が問われる/今までの選考会ではこんなことがあった/ずっと予算をまかなってきた山形市/山形市民とは誰か/映画で町を盛り立てる/こんなアイデアはどうだろうか/ドキュメンタリー映画の上映機会を増やすために/東北の地だからこそ可能だったヤマガタ?
 観客篇 遠くまで伸びたヤマガタの根 奈良と京都から:浦辻宏昌さん、東眞理子さん
  浦辻さんは非行小学生だった/改心後、柳澤壽男監督と出会う/浦辻さんと眞理子さんのヤマガタ体験/眞理子さんは画面に何か投げつけてやりたいと思った/女に苦労ばかりさせるアニメ?
【怒る通訳者】『ナオキ』をめぐる意見

第三章 映画を選ぶということ
  悲しい脳は非常灯で辞書を読む/インターネットがない時代の下調べ/小津安二郎は「オールド・ブラック・ジョー」をどう思っていたのか/選考委員会はこうなっている/村山匡一郎さんはこう考える/見応えのある映画が形作ってきたヤマガタの世界観/選ばれても、選ばれなくても/パトワルダン監督の映画が大好きだった頃/映画との付き合い方の移り変わりと果報者の話
【忍ぶ通訳者】身体に悪い仕事

第四章 祝祭と喧々囂々
 1 祝祭に差した影 一九九三年「世界先住民映像祭」
  コーディネーターの英断/ロバにファクスを運ばせて準備した映像祭/自分のことは自分で語りたい/コンペ審査結果の衝撃と波紋/私たちは悔しくて悲しくて大泣きした/先住民作家たちは映画祭の顔をつぶさずに抗議した
 2 二〇年後に思うこと 『黒い収穫』をめぐって
  阿部マーク・ノーネスの分析/原一男監督は「普遍性があり実に面白い」と言った/私も嫌々また観る、息子もしぶしぶ付き合う/先達の教えと新しい感想/世界先住民映像祭、再び?
 3 照明弾が落ちるそばで、子を抱き静かに子守歌を歌う女 『カネサタケ、抵抗の270年』
  ゴルフコース拡張のために墓を暴く/おめえは、ほんとはこっちの人間だっぺよ/どこにでも良心的な人はいるのです/では一般報道は一方的な見方ではないのか/子を安心させる女、はやり立つ闘士を諌める女/隣人同士の確執を乗り越えるための長い道のり/殉職した巡査の姉はモホークの歴史の本を翻訳した/ヤマガタの観客による歓迎のかっこよさ/ドキュメンタリー監督の仕事は人の話を聞くこと、本当に聞くこと
 4 告発ではなく希望の映画を 『学びの道』
  日本の路上生活者の暮らし方には秩序がありました/入植者たちは先住民社会をなかったことにする必要があった/寄宿学校とはどういうところだったか/聖職者による強姦と性的虐待/世代を超えて連鎖する絶望を断ち切る主人公たち/日本からの留学生にも知ってほしいこと/人を形作る母語が失われる日/なぜ佐藤真監督のような人たちと連帯して助け合ってこなかったのか
【抗う通訳者】英語帝国主義

第五章 作品をめぐる対話
 すべての人の物語 ヘルマン・クラル監督と『不在の心象』
  私的な、身をえぐるような作品/カメラを構えると何かが起こる/創るということとヤマガタの記憶/それはあなただけの問題ではない/『孤独の発明』に触発されて/字幕と価値観/賞金は消えた/人は真実味のある話を求めて映画館に行く/タルコフスキーはもう目指さない/二国間の深い淵/映画の生まれる場所/カメラとカウンセリング
 カメラの暴力と窃視性 森達也監督、安岡卓治プロデューサーと『311』
  二〇〇一年の不条理劇/森達也は一〇年ぶりにカメラを持った/本来、映画だけで成立すべきなんだけど……/人は他人の不幸を見たい/自分が鬼畜だってみんなに思われるの、つらくない?/やりたいから、撮りたいから、見たいから/ドキュメンタリーって自己開示だと思う/僕らも実は取材しながら翻訳してるわけですよ/ヤマガタは作り手の存在理由の一つかもしれないね/その後のやりとり
 編集室の孤独と植民地主義の残像 ヴィンセント・モニケンダム監督と『マザー・ダオ』
  山形の花屋さんはその日一五〇本の薔薇を売った/モニケンダム監督はなぜインタビューを中座したか/ナイトレート爆弾を積んで掘っ立て小屋に通う/編集の最後の最後まで私はシーンの入れ替えをしていた/『マザー・ダオ』は完成して一人で歩き始めた/オランダとインドネシアの関係と日韓関係/謝るということ
【和む通訳者】香味庵

あとがき 書かずにはいられなかった

山形国際ドキュメンタリー映画祭 受賞作品&スペシャル・イベント(一九八九―二〇一一)

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