12月16日『レイシャル・プロファイリング』刊行記念トークイベントのお知らせ - 2023.12.04
月愛三昧(がつあいさんまい)
親鸞に聞く
日本史の闇を切り裂く親鸞の声を聞く
『古事記』の時代から現代まで、日本史の底に流れる思想潮流と仏教との葛藤の渦。40年にわたり親鸞の声に耳を澄ませてきた在日朝鮮人の著者が、日本と朝鮮、自分自身の生涯とともに、歴史の闇に深い眼差しをそそぐ大著。
「あとがき」(2010年6月1日)より
「……私はいま、自分の心身に世界の深い地鳴りが広がるのを感じている。陰々と広がる地鳴り。その地鳴りはしかし、決して暗い響きばかりではない。重い響きの奥の方に吹き上がっているのは、明らかに第二次世界大戦後の重い歴史を背負って立つ人々の、未来へと向かう地の底からの足音である。
五濁(ごじょく)の深い二十世紀に生まれ、二十一世紀の不安を生きる私はいま、その人生の終末を意識するようになって、改めてその自分自身の心身の地鳴りを意識するのである。私はその地鳴りを記録したいと思った。そして、書きはじめたのであった。それが千枚にもおよぶ記録となったのである。
いまこの「あとがき」を書こうとして、人間の最良のメッセージは沈黙にほかならないという思いが、改めて脳裏を過ぎるのを覚える。しかし、「聲(こえ)」という漢字は、石と石とがはっしとかち合ったときの音を意味するということを聞いたことがあった。五濁を食してきた人間なればこそまた、自らを五濁の大海に投げてみるのも人間の印として許されるかも知れないという思いが、いまの私にはある。どんな「音」が起きるか。……」
カバー画:「ガーデニング(平和への道)」大岩オスカール幸男(東京国立近代美術館蔵) Gardening(Way to Peace)ⓒOscar Satio Oiwa