労働再審(シリーズ)

全6巻

「働くこと」の自明性を問い直す――揺らぐ労働の諸相から現代を描くシリーズ

ジャンル 政治・社会・労働
社会福祉・社会保障
出版年月日 2010/11/19
ISBN 9784272301805
判型・ページ数 4-6・288ページ

2000年代社会の現実によって再考を迫られつつある「労働」の概念をラディカルに問い直し再定義するために、各領域の知を結集した新シリーズ。2010年11月刊行開始。

 

〈編集にあたって〉より
一九九〇年代以降の社会と経済の変動は、日本社会において「労働」という巨大な問題を再浮上させた。さまざまな位相で新たに生じた事態を把握するため交わされた数々の議論において、しばしば用いられたのが「一般世帯の母子世帯化」「社会全体の寄せ場化」「国内第三世界」といった言葉であった。これらの言葉は、ある事態を共通して暗示するものといえる。すなわち、従来抱かれてきた労働のイメージ(とりわけ「日本型雇用慣行」のもとでの)が、女性、外国人、貧困層、障害者……といった人々の多様な労働との分離の上に成り立つものであったこと、そして近年、そうした分離と排除の境界線のなし崩しの消滅にともない、資本主義下の労働に元来備わる苛酷さが否応なく可視化され、同時にそこにはかつてない暴力の相貌さえ加わりつつあることである。
男性・日本人・健常者であることを前提とした正社員に保障されてきた地位と報酬が自明でなくなるなか、ある労働に対する正当な対価を主張するには、賃金の支払い手だけではなく、そこから排除された人々とも対峙する――正当性をめぐる言説と、労働市場における直接的な競争の双方において――ことを余儀なくされている。その結果、立場の異なる労働者間に亀裂を生じ、互いの足元を掘り崩しあうような徴候も生まれている。こうした隘路を脱するには、排除を含み込んだ従来の労働モデルそのものの再検証が必要である。
本シリーズは、このような認識のもとに編まれるものである。従来、労働の範疇からは周縁的・逸脱的とされてきた領域、あるいは除外されてきた領域から労働を再検討することを通じ、現出しつつある社会変動を象ることを企図している。全六巻の構成は以下の通りである。
第一巻「転換期の労働と〈能力〉」では、「能力」を切り口として、労働とそこに向けて人々を送り出す教育が、変容の果てに抱えるに至った諸問題を、多様な角度から記述し検討を加える。
第二巻「越境する労働と〈移民〉」では、若年労働、女性労働などの領域で議論されてきた論点と外国人労働に関する議論を接続し、現代の労働をめぐる構造変容を国際移動というファクターからとらえなおす。
第三巻「女性と労働」では、労働、生存、貧困をめぐる問題は「女性労働問題」であるとの認識に立ち、階層化され分断させられた女性と労働の世界を描きながらも、女性たちの「つながり」が力になることへの期待と、自己/他者の再生産の保障を通した労働の場の変革を提起する。
第四巻「周縁労働力の移動と編成」では、地理的な移動をともないつつなされた労働力化と周縁労働者の形成メカニズムを解明するとともに、集積された労働者たちにとっての空間のもつ意味を、社会学的・地理学的に解明する。
第五巻「ケア・協働・アンペイドワーク」では、賃労働の空洞化とアンペイドワークの動員/有償化によって境界が不分明化していく「労働」の諸相に焦点を当て、その陥穽と可能性を理論的・実証的に解明する。
第六巻「労働と生存権」では、労働者/非労働者の序列に基づく福祉国家制度のもとで周辺化された人々とのかかわりから労働と生存権の関係を問いなおすとともに、福祉国家の前提する完全雇用が揺らぐなかで、労働と生存権の関係を再定義する試みへの接続を模索する。
言及の有無にかかわらず、各巻の議論は相互に接続・関連しており、横断的に読んでいただければ問題群の布置がより立体的に把握できよう。本シリーズを多くの方に活用いただけることを願う。

全巻目次(章題・順序は変更になる場合があります)

第1巻 転換期の労働と〈能力〉 (本田由紀編)
序章 ポスト近代社会化のなかの「能力」(本田由紀)
1章 企業内で「能力」はいかに語られてきたのか(梅崎修)
2章 公務職場における「ポスト近代型能力」の要請(櫻井純理)
【ノート】ジェンダー化された「能力」の揺らぎと「男性問題」(多賀太)
3章 高卒フリーターにとっての「職業的能力」とライフコースの構築(古賀正義)
【ノート】「キャリア教育」で充分か?(筒井美紀)
【ノート】「無能」な市民という可能性(小玉重夫)
4章 若者移行期の変容とコンピテンシー・教育・社会関係資本(平塚眞樹)
【ノート】「能力観」の区別から普遍性を問い直す(堤孝晃)
5章 ポスト・フォーディズムの問題圏(橋本努)

第2巻 越境する労働と〈移民〉 (五十嵐泰正編)
序章 「越境する労働」の見取り図(五十嵐泰正)
1章 外国人「高度人材」の誘致をめぐる期待と現実(明石純一)
2章 EPA看護師候補者に関する労働条件と二重労働市場形成(安里和晃)
【ノート】地方労働市場における日系人労働者の存在と役割(大久保武)
3章 外国人単純労働者の受け入れ方法の検討(上林千恵子)
【ノート】日本人とブラジル人が共闘したはじめての単組の経験(平野雄吾)
4章 フィリピン人エンターテイナーの就労はなぜ拡大したのか(津崎克彦)
5章 オーストラリアのワーキングホリデー労働者(川嶋久美子)
6章 日本の外国人労働者政策(濱口桂一郎)

第3巻 女性と労働 (藤原千沙・山田和代編)
序章 いま、なぜ女性と労働か(藤原千沙・山田和代)
1章 誰が正社員から排除され、誰が残ったのか(三山雅子)
【ノート】氷河期世代の女性たち(古知朋子)
2章 事務職にみる女性労働と職場の変化(駒川智子)
【ノート】派遣労働問題の本質(水野有香)
3章 「消費される農村」と女性労働(渡辺めぐみ)
4章 女性労働と専門職(鵜沢由美子)
【ノート】ケア労働をどのように意味づけるのか(齋藤曉子)
5章 戦後日本の性「労働」(小野沢あかね)
【ノート】人間らしく働き続けたい(圷由美子)
6章 ジェンダー雇用平等と労働運動(山田和代)

第4巻 周縁労働力の移動と編成 (西澤晃彦編)
序章 身体・空間・移動(西澤晃彦)
1章 グローバル化時代の働き方を考える(丹野清人)
2章 地名なき寄せ場(原口剛)
3章 集団就職の神話を解体する(山口覚)
4章 女性の周辺労働力の再編(山口恵子)
5章 工場街と詩(道場親信)

第5巻 ケア・協働・アンペイドワーク――揺らぐ「労働」の輪郭 (仁平典宏・山下順子編)
序章 揺らぐ「労働」の輪郭(仁平典宏)
1章 放射能汚染と開発主義(渋谷望)
2章 雇用社会の変容と疑似自営化(居郷至伸)
3章 ワーク・ライフ・バランスの変容と展望(服部良子)
4章 ケア労働の分業と階層性の再編(山根純佳)
5章 介護サービス・労働市場の再編とNPO(山下順子)
6章 「新しい認知症ケア」におけるケア労働(井口高志)
7章 労働/ケアの再編と「政治」の位置(田村哲樹)
8章 完全従事社会(福士正博)


第6巻 労働と生存権 (山森亮編)
序章 福祉国家における生存権と労働(山森亮)
1章 「健康で文化的な最低限度の生活」とは何か(遠藤美奈)
2章 社会保障・社会福祉における排除と包摂(堅田香緒里)
3章 年金権の国際比較からみた貧困とケア労働(田宮遊子)
4章 障害・労働・所得保障(岡部耕典)
5章 ワークフェアと生存権(小林勇人)
6章 最低賃金と給付付き税額控除(村上慎司)
4章 保険料支払い困難者の年金
5章 最低賃金と給付付き税額控除(村上慎司)
7章 私たちはいたるところ隠れたるこの「分有」を見いだす(入江公康)

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