【web連載】須藤遙子「愛妹通信―自衛隊広報レポート」第7回

航空自衛隊浜松広報館「エアーパーク」

 

愛妹。今回は、静岡県浜松市にある航空自衛隊の広報館、エアーパークを訪れたときのことを書きたいと思います。1999年4月4日にオープンし、2014年7月には来館者数500万人を突破した人気の施設です。特に2013年には、航空自衛隊の広報室を描いたTBSドラマ『空飛ぶ広報室』のロケ地となり、宮崎駿監督のアニメーション映画『風立ちぬ』や自衛隊協力映画でもある山崎貴監督『永遠の0』で零戦がクローズアップされたことなどを背景に、多くの人が訪れました。交通の便があまり良くはない場所なのですが、土日はかなり混雑し、イベントが開催される日には入場待ちの車列ができるそうです。私は平日の昼間に行ったので、ほとんど人がいなくてゆっくり見て歩くことができました。

 

門を入る前から、屋外展示の飛行機やヘリコプターなどが目につきます。良く晴れた日だったので、青空を背景に飛行機の翼が太陽の光を浴びて光っている様子はなかなか絵になり、それ見ただけで歓声を上げている子どももいましたよ。それらに混ざって地対空ミサイルが展示されており、全長8メートルほどあるのでとても大きく、先端部に「航空自衛隊」という文字が入っているのが印象的でした。

 

 
屋外に展示されている飛行機

 

施設は、展示資料館、全天周シアター、展示格納庫の三つの建物で構成されています。正面入り口のある展示資料館に入ると、戦闘機の仕組みや任務等が、パネルを一部外して内部を見えるようにした機体や実物大模型などで、わかりやすく説明されています。第2回で紹介したりっくんランドもそうでしたが、来館者を飽きさせないように、戦闘機などの実物や模型、映像やシミュレーターなどが効果的に組み合わされていました。全天周シアターでは、展示飛行で有名なブルーインパルスを紹介する作品と、訓練上の仮想敵となる通称アグレッサー部隊をフィーチャーしたフィクションドラマの2つの作品が、1日に6回交互に上映されています。パンフレットにあるように、まさに「見て体験して楽しむ航空自衛隊のテーマパーク」なのです。  

 

このエアーパークの一番の見所は、様々な飛行機が所狭しと展示されている広い広い格納庫でしょう。天井からは零戦が下がり、今見ると丸くて可愛らしい形をした初代ブルーインパルス、練習機などがたくさん並んでいます。私が見ていると、来館者が少なくて暇そうだった60代半ばと思われる係員が声をかけてきました。なんと元戦闘機パイロットだったというこの係員は、幹部以外の自衛官は定年が50代前半とかなり早いので、民間会社に就職して再度定年を迎えた後、エアーパークで仕事をしているということでした。この方は本当に飛行機が好きなようで、現在の職場に戻れたことをとても嬉しそうに語り、楽しそうに愛おしそうに戦闘機のあれこれを説明している姿に少しびっくりしました。でも、愛妹、どんな仕事であれ、自分の仕事が大好きな人を見るのは悪い気持ちはしませんね。

 

様々な飛行機が並ぶ格納庫

 


初代ブルーインパルス

 

展示してある戦闘機のコックピットに乗れるようになっているのですが、古い型とはいえ、日本で本物のの戦闘機に乗れるのはここだけだから、ぜひ乗ってみてくださいと強く勧められ、私も乗ってみました。とにかく狭く、足をあちこちぶつけながらやっと座ると、横にも前にも計器やボタンがぎっしりと配置されています。身体能力はもちろんですが、操縦には大変な知能・知識が必要なのだろうなと実感させられます。操縦席の写真を撮ってもいいというので、保安上大丈夫なのですかと聞くと、現在使っている戦闘機だったらもちろんダメですよ、と笑っていました。週末や夏休みになると、この席に座るのも順番を待たなければいけないということです。

 

 
戦闘機の操縦席

 

エアーパークは、航空自衛隊浜松基地に隣接しているので、3階の窓から滑走路がよく見えます。私が見ていたときは、ちょうど練習機と思われる飛行機2機が、轟音と共に着陸しました。1968年公開の自衛隊協力映画『ジェットF104脱出せよ』では、パイロットらが練習用のプロペラ機から最新のジェット戦闘機まで、数々の試験をパスしつつ、順番に難易度の高い飛行機に乗り換えながら成長していく姿が描かれていましたが、この練習機に乗ったパイロットも、いずれは現在の主力戦闘機であるF15に乗るようになるのでしょうか。

 

愛妹。2001年9月11日に起こったアメリカ同時多発テロの後、アフガニスタン攻撃のために在日米軍が緊急訓練を行い、現地へ飛び立って行きました。私はそのとき神奈川県に住んでいましたが、横須賀沖の空母と厚木基地の間で離発着を繰り返す戦闘機航路の下だったため、しばらくはすぐそばで戦争が起こったかのように、すさまじい爆音が続いていたのを今でも思い出します。先日、パリで同時多発テロが起こり、130名ほどの人が亡くなりました。フランスはその報復として、イラクとシリアにある「イスラム国(IS)」の拠点に対して空爆を続けています。ロシア軍機がトルコ軍に撃墜される事件も起きました。世界のあちこちで、あの戦闘機の爆音が響いているのです。愛妹、私に親切に話をしてくれた元パイロットの方は、こうした緊張をどう思われているのでしょうね。世界中の戦闘機パイロットたちも、きっとあの係員のように普段は優しい笑顔を見せていることでしょう。そう思うと、とても空しく哀しい気持ちになります。

 

 

★「愛妹(あいまい)」の由来については、こちらをお読みください。

 

★連載第1回「防衛省市ヶ谷台ツアー」
★連載第2回「陸上自衛隊広報センター「りっくんランド」」
★連載第3回「海上自衛隊第1術科学校
★連載第4回「平成27年度富士総合火力演習」
★連載第5回「防衛大学校見学ツアー」
★連載第6回
「アメリカ海軍兵学校見学ツアー」

 


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[プロフィール]
すどうのりこ/1969年生まれ。横浜市立大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。メディア学、文化政治学。現在、日本学術振興会特別研究員。著書に、『自衛隊協力映画――『今日もわれ大空にあり』から『名探偵コナン』まで』(大月書店、2013年)。

 

※この連載は、日本学術振興会科学研究費助成事業挑戦的萌芽研究「自衛隊広報のエンターテインメント化に関するフィールドワーク研究」(平成27年度~29年度)の成果を一部発表するものです。

 

 

 

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