【web連載】須藤遙子「愛妹通信―自衛隊広報レポート」第11回

航空自衛隊春日基地見学

 

 

愛妹。今回は、九州福岡県にある航空自衛隊春日基地で、先月28日に開催された休日見学に参加してきました。春日基地での事前申し込み制の見学は、平日に随時受け付けているようですが、福岡空港内に分屯している板付(いたづけ)地区での休日の見学ツアーは、初めて企画されたのだそうです。定員は40名でしたが、400名を超える約10倍もの応募があったと説明がありました。地元向けなので、参加は幼稚園から小学生の子ども連れのファミリーがほとんどです。少子化もあって隊員の成り手が減っているので、今日来ているお子さんは将来ぜひ入隊してほしい、と広報官が呼びかけていました。一人参加の60代、70代の人を含め、待合室はいかにも近場から遊びに来ているというような、のんびりとリラックスした雰囲気でした。これまで見てきた大型広報施設や大きなイベントで感じる高揚感のようなものはほとんど無く、逆に新鮮でしたね。



見学は、ターミナルで簡単な説明を受けた後に、2グループに分かれて始まりました。私たちのグループは、まず練習機のT-4、輸送ヘリコプターのCH-47Jがある格納庫に向かいました。T-4は、プロペラ機での初等訓練の後に使用される最初のジェット練習機で、教官が後ろに乗って指導できるよう二人乗りになっています。川崎重工業による純国産機で、運用開始から30年近くになることから、そろそろ新しいものを作る時期にきている、と隊長が話していました。確かに、近くで見るT-4はかなり年季が入っており、古いなぁという印象は否めません。機体は小さく、自転車と同じくらいのタイヤの大きさには驚きます。実際に使っているこの練習機の操縦席に参加者一人一人を座らせてくれ、皆とても喜んでいましたよ。

 


練習機T-4



パイロットが実際に装着するヘルメットや、飛行中の加速度を軽減するための耐Gスーツなどを試せるコーナーもあり、隊員の方にうながされて私もヘルメットをかぶってみたのですが、とてもとても重くてよろけるほどでした。スーツも非常に重く、操縦席に座ってしまえば重さは気にならないということでしたが、操縦以前に装備を身につけるだけでも大変だと改めて思いましたね。映画などでは、スーツやヘルメットをかぶってパイロットが颯爽と滑走路を歩いていたりしますが、訓練していないと普通に歩くのも困難な気がします。これでさらに戦闘するなど、本当に気が遠くなります。靴のような格好をした寝袋状のものは、一人用救命ボートです。通常はパイロットの座席の下にあり、緊急脱出した際には膨らんで、洋上でも丸1日は生存できるような防水・防寒構造になっているとのことでした。すごく甘いお菓子のようなものも装備されているそうです。

 


緊急時の一人用救命ボート



航空自衛隊は、北部航空方面隊・中部航空方面隊・西部航空方面隊・南西航空混成団の4つに分かれており、九州・中国・四国地方を担当するのが「西空(せいくう)」と呼ばれる西部航空方面隊です。T-4の尾翼に描かれていたマークは、西部航空方面隊司令部支援飛行隊の部隊マークだそうです。筑前福岡藩初代藩主だった黒田長政の兜、玄海の荒波、博多湾沖の志賀島から発見された金印に刻まれた「漢委奴国王」がデザイン化されています。航空自衛隊には多くの部隊があり、調べるとマークはずいぶん様々ですが、このようにそれぞれ所属する地域を示すような意匠を取り入れていることも多いようです。

 


西部航空方面隊司令部支援飛行隊のマーク

 


T-4と並ぶ今回のもう一つの目玉は、通称「チヌーク」と呼ばれるCH-47Jです。乗務員5名のほか、最大55名まで乗ることができ、オートバイや車両等を運ぶことも可能な大きなヘリコプターです。災害時に活躍するので、テレビで見ることも多いですね。中に入ると両側に担架のような簡単なベンチが設置されており、中央の空間はかなり広いです。隊員によれば、乗り心地はさすがに良くはなく、通常乗るには1時間くらいが限度ということでした。この操縦席にも座らせてもらいましたが、たくさんの計器に囲まれているのでやはり狭く、隊員の方が何度も何度も「頭をぶつけないでくださいね!」と注意を促していました。

 


CH-47J、通称チヌーク

 

印象的だったのは、戦時中にこの福岡も空襲で焼土となった、我々は二度と福岡の街に一発の爆弾も落とさせないという意志を持って任務についている、という隊長の言葉です。「日本」ではなく「福岡」という彼の言葉には、心を動かされるものがありました。けれど愛妹、彼の愛する福岡に爆弾を落としたのはアメリカである、ということは全く念頭に無いようです。航空自衛隊は、戦後にアメリカの協力によって設立されました。実際に任務についている人々の純粋な思いとは別の次元で、日本全体のこうした「都合のいい忘却」とでもいうべきものが、沖縄や東アジアでの軋轢や確執につながっている気がしてならないのですが、あなたはどう思いますか。

 

 

★「愛妹(あいまい)」の由来については、こちらをお読みください。

 

★連載第1回「防衛省市ヶ谷台ツアー」
★連載第2回「陸上自衛隊広報センター「りっくんランド」」
★連載第3回「海上自衛隊第1術科学校
★連載第4回「平成27年度富士総合火力演習」
★連載第5回「防衛大学校見学ツアー」
★連載第6回「アメリカ海軍兵学校見学ツアー」
★連載第7回「航空自衛隊浜松広報館「エアーパーク」」
★連載第8回「艦艇公開 護衛艦さみだれ」
★連載第9回「アニメ『ガールズ&パンツァー』」
★連載第10海上自衛隊呉史料館「てつのくじら館」

 


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[プロフィール]
すどうのりこ/1969年生まれ。横浜市立大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。メディア学、文化政治学。現在、日本学術振興会特別研究員。著書に、『自衛隊協力映画――『今日もわれ大空にあり』から『名探偵コナン』まで』(大月書店、2013年)。

 

※この連載は、日本学術振興会科学研究費助成事業挑戦的萌芽研究「自衛隊広報のエンターテインメント化に関するフィールドワーク研究」(平成27年度~29年度)の成果を一部発表するものです。

 

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