【web連載】須藤遙子「愛妹通信―自衛隊広報レポート」第16回

自衛隊夏まつり・盆踊りフェスタ

 

愛妹。毎年、日本各地の自衛隊の基地・駐屯地では、夏まつりが開催されます。今ほど自衛隊のイベントが盛んでなかった私が子どもだった40年近く前でも、自衛隊の夏まつりはあった記憶があります。たとえば、静岡県滝ケ原駐屯地の夏まつりは、1966年から開催されているようです。私は今年、福岡県の航空自衛隊春日基地と陸上自衛隊福岡駐屯地の2つの夏まつりに行ってみました。

 

まず、7月21日に行ったのは春日基地です。春日市は博多からJRで15分ほどの距離で、福岡の中心に近いことからベッドタウンとして11万人超の住民がいます。春日基地のホームページによると、1940年に前身となる陸軍小倉造兵廠春日製造所ができ、敗戦後は米軍に接収されますが、航空自衛隊の発足に伴い、1960年に春日基地として再出発して現在に至るということです。春日基地の飛行場は第11回で書いたように福岡空港に併設されているので、会場となっている施設には建物とグラウンドしかなく、住宅街のなかにあります。

 

 

おまつりは夕方5時30分から8時30分まで、私は6時前くらいに会場に着いたのですが、すでに結構な人が会場にいて、しかも人気アーティトのコンサートでもあるかのように、あとからあとから人がやってきました。浴衣を着た子どもたちの姿が目立ち、近隣の保育園・幼稚園・小学校・中学校に通う子たちは全員やってきているかのようでしたよ。基地の正門手前から屋台が並んでおり、焼きそばやらとうもろこしやらの匂いが漂っています。入り口で本当に簡単な手荷物検査があり、メイン会場のグラウンドへと人が流れていきます。グラウンドの手前では、小さな子どもが自衛官のミニ制服を着て写真を撮ることのできるコーナーがあって、常設展示してある初代ブルーインパルスの前で男の子が得意そうにポーズを取っていました。福岡地本のゆるキャラ「ピコット」もいて、まるでミニ遊園地のような雰囲気でしたが、少し離れたところには、現役を引退したナイキJ地対空ミサイルが展示してあり、物騒な異彩を放っていましたね。

 

 

 

メイン会場のステージでは、地元の子どもたちのダンスが披露されていて、たくさん出ている屋台で食べ物や飲み物を買った人々が、思い思いにくつろいでいました。隊員たちも、芝生の上に大きなシートを敷いて飲み食いし、とても楽しそうです。こういうイベントに来ていつも印象的なのは、くつろいでいる隊員たちの表情です。イベントのときには上司もうるさいことを言わないのでしょう。子どものように嬉しそうに屋台の食べ物を頬張ったり、ビールを片手に仲間と談笑したりしているのを見ると、普段受けているであろう厳しい訓練を逆に想像してしまい、複雑な気持ちになるのです。

 

 

 

福岡駐屯地の盆踊りフェスタには、8月3日に行きました。福岡駐屯地は、地図で見ると春日基地から500メートルくらいしか離れておらず、福岡地本も同じくらいの距離にあるので、このあたり一帯が自衛隊の街ともいえるでしょう。最後に花火が上がるので、春日基地のおまつりのときよりももっと大勢の人たちが、開始時間すぐから続々と駐屯地へと向かっていきます。敷地面積としてはほとんど変わらないのですが、春日基地には大きな木がたくさん生えていてグラウンドまですぐ着くのに対し、福岡駐屯地は春日基地よりも大きなグラウンドにたどり着くまでに、様々な施設が建ち並ぶなかを結構な距離歩くので広く感じます。グラウンドには各隊ののぼりを立てたテントがずらりと並び、関係者が座れるようになっています。たくさんの屋台が出ているのは同じで、子どもたちのステージがあるのも一緒です。

 

6時30分くらいから盆踊りが始まりました。隊ごとに揃いの法被やTシャツを着た隊員たちが端の方で一旦整列し、のぼりを先頭にしてステージの周囲にかなり広く取られた盆踊りスペースに次々に入場していきます。炭坑節や東京音頭などのおなじみの曲がかかると、時々かけ声をかけたりしながら元気よく踊っていましたよ。自衛隊員が盆踊りするのを初めて見たので、正直ちょっと驚きましたね。福岡はどうやら盆踊りが盛んな土地らしく、夏の間はあちこちで盆踊りが開かれていたので場所柄もあるのかもしれませんが、あまり盆踊りの経験のない私としては不思議な光景でした。20時からは花火も上がり、大いに盛り上がってイベントは終了しました。

 

 

 

 

愛妹。この2つの自衛隊夏まつりに行って、地元の人が毎年おまつりを楽しみにしていることがよくわかりました。この地域では自衛隊に勤める人も多いでしょうから、家族や友だちに自衛隊の人がいるのも珍しくないと思います。近隣住民にとって、自衛隊はあくまで職業の一つに過ぎず、その政治性や問題性は切り離されているように感じます。また一方で、学問やジャーナリズムに携わる人は、自衛隊の日常性に目を向けたがりません。この両者の乖離を埋めることがとても重要だと思うのですが、愛妹、あなたはどう思いますか。

 

 
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 ★「愛妹(あいまい)」の由来については、こちらをお読みください。

 

 

★連載第1回「防衛省市ヶ谷台ツアー」
★連載第2回「陸上自衛隊広報センター「りっくんランド」」
★連載第3回「海上自衛隊第1術科学校
★連載第4回「平成27年度富士総合火力演習」
★連載第5回「防衛大学校見学ツアー」
★連載第6回「アメリカ海軍兵学校見学ツアー」
★連載第7回「航空自衛隊浜松広報館「エアーパーク」」
★連載第8回「艦艇公開 護衛艦さみだれ」
★連載第9回「アニメ『ガールズ&パンツァー』」
★連載第10回「海上自衛隊呉史料館「てつのくじら館」」
★連載第11回「航空自衛隊春日基地見学」
★連載第12回「陸上自衛隊久留米駐屯地一般開放」
★連載第13回「大刀洗平和記念館と戦跡めぐり」
★連載第14回「防府南基地・開庁記念行事」

★連載第15回「防府航空祭2016」

 

 
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 [プロフィール]
すどうのりこ/1969年生まれ。横浜市立大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。メディア学、文化政治学。現在、筑紫女学園大学現代社会学部准教授。著書に、『自衛隊協力映画――『今日もわれ大空にあり』から『名探偵コナン』まで』(大月書店、2013年)。

 

 

※この連載は、日本学術振興会科学研究費助成事業挑戦的萌芽研究「自衛隊広報のエンターテインメント化に関するフィールドワーク研究」(平成27年度~29年度)の成果を一部発表するものです。

 

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