【web連載】須藤遙子「愛妹通信―自衛隊広報レポート」第17回

佐世保地方隊サマーフェスタ 2016


愛妹。今回は、8月6日、7日の2日間にわたって「第12回させぼシーサイドフェスティバル2016」と同時開催された「佐世保地方隊サマーフェスタ 2016」について書きたいと思います。私は、2日目の日曜日に行きました。


長崎県佐世保は、横須賀・呉・舞鶴と並ぶ旧大日本帝国海軍の四軍港の一つで、鎮守府が置かれていた海の要所です。長崎県は、大小さまざまの多くの島と複雑な海岸線を持ち、入江の中にある佐世保は特に海の防衛にとって非常に有利かつ重要であることから、造船業が発達してきました。


現在は、自衛隊のみならず在日米軍の基地も隣接しています。地元の方の話によると、朝鮮戦争とベトナム戦争の際は出撃・補給拠点となっていたために、街全体が特需の恩恵を大いに受け、どの店も繁盛し、米兵のための大きなスクリーンの映画館など娯楽施設もいくつもあったそうです。ベトナム戦争終結を機に、街は火が消えたようになったと聞きました。今は嘆くほどの寂れようではないにしろ、昔はもっともっと栄えていたのでしょうね。

 


サマーフェスタの会場は、JR佐世保駅のすぐ目の前の佐世保港です。入り口を入ってすぐに、ミサイル艇「しらたか」が公開されていました。全長は50メートルで、これまで見たことのある護衛艦と比べるとずいぶん小ぶりに感じます。通常の艦艇のように鉄ではなくアルミ合金でできており、他の艦艇の最高時速が50キロであるのに対し、海上自衛隊の中でも一番速い時速80キロのスピードを出すことが可能だと、見学前に説明されました。
船の後部には大きな3つのミサイル発射装置が付いており、前には速射砲があります。攻撃をして素早く逃げる、というのがこの船の任務なのでしょう。小さな船体ですが、なかなか物騒な印象でした。

 


炎天下のなか7、8分ほど歩くと、護衛艦「くらま」に着きました。全長は159メートル、「しらたか」の3倍の大きさです。白いドーム状のレーダーが上部にぽこぽこといくつも付いており、後部には3機装備されている哨戒ヘリコプターが離着艦するための広いスペースがあります。こちらにもたくさんの火器が装備されており、速射砲や高性能20ミリ機関砲、艦対空ミサイルのほか、魚雷にロケットのついたアスロックランチャーや対艦ミサイルをかわすためのチャフロケットシステムなどが、パネルで解説されていました。
これを読んでいると、いかに現代の武器がハイテクかがわかります。この技術を開発するために費やされたお金や時間もさることながら、なぜこれほどの知性や想像力が戦いのために使われなければならないのだろう、と本当に虚しくなってしまいましたね。

 



今回の私にとってのメインイベントは、SB(特別機動船)体験搭乗です。SBは大きな黒いゴムボートで、機雷などの水中処分や遭難者の捜索の際に使用され、島嶼部での上陸なども想定されています。人数限定で先着順、これも人気のイベントなので、列に並んで3時間後くらいの回の券を手に入れました。
体験搭乗が行われていたもう一つのYF(交通船)のほうは、見た目には小ぶりの遊覧船のような感じで、小さい子どもを連れた家族が参加しているのが目につきました。
ボートに乗り込むと、ロデオマシーンのような椅子にまたがり、シートベルトをします。SBは「しらたか」と同じく時速80キロくらいのスピードが出ます。さすがに最高速度ではありませんが、たまに風で呼吸が苦しいくらいの相当な速さでしたよ。搭乗者へのサービスで、わざと右に左にカーブを切って大きな白波を立て、そのたびに歓声が上がります。

 


SBの操縦等していた隊員らは、水中での過酷な任務を担当することから、海上自衛隊のなかでもひときわ厳しい訓練をしているとのことでした。まず、見た目からして普通の海上自衛隊員とは全く違います。通常の制服が白の上下であるのに対し、彼らは黒いTシャツと短パンに黒いジャングルハット、黒いサングラスをしています。よく日に焼け、いかにも任務で鍛えられたというような無駄のない筋肉がついていました。
一人が時おり冗談を交えてマイクで解説をしながら航行するのですが、サングラスの奥の表情は読み取れず、この人たちはいざとなったらためらいもなく人を殺すだろうな、とふと思いました。これまでずいぶん自衛隊を見てきましたが、愛妹、そんなふうにひやりとした空気を感じたのは初めてのことでしたね。尖閣などでの情勢が緊迫するなか、相当実戦に近い訓練をしているのではないでしょうか。



会場では、制服ファッションショーも行われており、男女の自衛官が腕を組んでステージを歩いているのが見えました。最近では普通のファッションショーに自衛隊が出ることも珍しくなくなってきており、ずいぶん世間の風潮が変わったのだなぁと実感します。
会場の自衛官募集ブースでは、高校生と思われる女の子とお母さんが、熱心に話を聞いていました。佐世保では、自衛隊が就職先として大きな位置を占めているのでしょう。愛妹。このように自衛隊が地域に溶け込んだ土地のイベントに行くたびに、地元の経済・産業とSB搭乗で感じたような軍事の緊張との乖離と接合を深く考えさせられます。





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 ★「愛妹(あいまい)」の由来については、こちらをお読みください。

 

 

★連載第1回「防衛省市ヶ谷台ツアー」
★連載第2回「陸上自衛隊広報センター「りっくんランド」」
★連載第3回「海上自衛隊第1術科学校
★連載第4回「平成27年度富士総合火力演習」
★連載第5回「防衛大学校見学ツアー」
★連載第6回「アメリカ海軍兵学校見学ツアー」
★連載第7回「航空自衛隊浜松広報館「エアーパーク」」
★連載第8回「艦艇公開 護衛艦さみだれ」
★連載第9回「アニメ『ガールズ&パンツァー』」
★連載第10回「海上自衛隊呉史料館「てつのくじら館」」
★連載第11回「航空自衛隊春日基地見学」
★連載第12回「陸上自衛隊久留米駐屯地一般開放」
★連載第13回「大刀洗平和記念館と戦跡めぐり」
★連載第14回「防府南基地・開庁記念行事」

★連載第15回「防府航空祭2016」
★連載第16回「自衛隊夏まつり・盆踊りフェスタ」

 
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 [プロフィール]
すどうのりこ/1969年生まれ。横浜市立大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。メディア学、文化政治学。現在、筑紫女学園大学現代社会学部准教授。著書に、『自衛隊協力映画――『今日もわれ大空にあり』から『名探偵コナン』まで』(大月書店、2013年)。

 

 

※この連載は、日本学術振興会科学研究費助成事業挑戦的萌芽研究「自衛隊広報のエンターテインメント化に関するフィールドワーク研究」(平成27年度~29年度)の成果を一部発表するものです。

 

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