【web連載】須藤遙子「愛妹通信―自衛隊広報レポート」第19回

出雲駐屯地創立63周年記念行事・市中パレード

愛妹。今回は、11月20日におこなわれた島根県出雲駐屯地創立63周年記念行事における、市中パレードの様子を書きたいと思います。

出雲市の人口は約17万人、山陰地方で3番目に大きい市です。出雲大社をはじめとして、数多くの歴史ある神社や古代遺跡が点在する神話の街でもあります。
今月11月は旧暦10月で、全国の神さまが出雲に集まって、様々な会議をすると言われます。それで全国では旧暦10月を神無月と呼ぶのですが、出雲では逆に神在月と呼んで特別なお祭りがされるんですよ。私が行った時もちょうど神在祭の最中だったので、市内には観光客が大勢来ていました。

市中パレードは、出雲市役所から南にまっすぐ下ったJR出雲市駅までの約500メートルの一般道路を使っておこなわれます。その真ん中あたりに式典会場があり、観閲席や来賓席が設けられていました。駐屯地には63年の歴史がありますが、パレードがおこなわれるようになったのは2005年で、旧出雲市を含む2市4町の合併を記念して始められたということです。
駅から会場をめざして歩いていると、60~70代の「島根県自衛隊父兄会」の方たちが、揃いのジャンパーを着て、紙でできた日の丸の旗を配っていました。私が会場に着いたのは式典が始まる15分くらい前でしたが、もちろん観光客らしき人は見かけず、関係者や家族以外では近所の人がパラパラと見に来ているというような印象でしたね。

イベントをサポートしていた島根県自衛隊父兄会の方たち

 

式典は、先月見た中央観閲式のミニチュア版のような感じでした。まずは音楽隊の入場、続いて隊員たちが小隊ごとに行進してきて、観閲席の前に整列していきます。観閲官は内閣総理大臣ではなく二等陸佐ですが、数は少なくとも国会議員や市会議員が出席しているところや、それぞれの紹介・挨拶が堅苦しくてやや長いところも同じでした。

行進する隊員


防府南基地で見た時のように、文民の挨拶の時には隊員たちが「休め」の姿勢を取ります。この時に、手に持っている銃の後部を地面に置くのですが、そのときのカシャッという何とも言えない音が、すぐ目の前に武器があるのだ、ということを思い起こさせ、空砲に違いないとは思いつつも、これが人に向けられることを考えると少し怖くなりました。

微動だにせず国旗を持つ旗手


出雲大社の宮司が来賓席の上位に座っていたことと、市長の挨拶の中に「長い海岸線を有する島根県」は国防が特に重要である旨の言葉があったことが印象的でした。地元の人の話では、海岸には中国語や韓国語が書かれたゴミがたくさん打ち上げられるということなので、海の向こうはすぐ外国であることを島根の人たちは実感しているのでしょう。

式典が終わる頃には、観客もだいぶ増えてきました。地元の住民は、最初に長い挨拶があることを知っていて、遅めにやってくるようですね。そして、いよいよパレードが始まります。ジープによる国旗入場に続き、島根県と出雲市の旗が同じくジープに乗って入場します。その後は、様々な種類のトラック・戦闘車両・オートバイなどが、続々と通過していきます。さすがに戦車はありませんでしたが、これほど多くの自衛隊車両が一般道路を走っているのを初めて見たので、やはり威圧感がありました。

パレードする車両


また、自分が立っている同じ道路を彼らが走っていくことで、もしこの車両がこちらに向かってきたら、もしあの大砲がこちらに向けられたら、と初めてリアルに想像したように思います。今まで見てきたイベントでは、「観客席」という完全に区切られた席にいたので、そこまでの想像には至ることがありませんでした。

愛妹。私はずいぶん自衛隊車両などを見てきましたが、その時にはともかく「おお……」と圧倒され、少し興奮の混じった間の抜けた笑みが浮かんでしまうのですよね。とりあえず普段見ることのない、大きくて珍しくて強そうなものなので、小さな子どもが電車や飛行機をポカンと口を開けて見るように、理屈以前の反応をしてしまう気がします。

沿道の人たちも、どこか少し恥ずかしいような後ろめたいような笑顔で、配られた日の丸を振っていたように見えました。一人の20代と思われる男性は、両手に一つずつスマートフォンを持ち、右手のカメラで車両を写した後に、左手のカメラで車両と一緒にニッコリ笑う自分を撮っていましたが、今回はこうしたマニアの姿が本当に少なかったですね。

パレードがおこなわれた日は、南スーダンでの国連平和維持活動で、安全保障関連法に基づく新任務である「駆けつけ警護」が初めて付与された陸上自衛隊派遣部隊の先発隊が、青森空港を出発した日だったと後から知りました。観閲官の挨拶には、「自衛官の心がまえ」という文書にある「自らの危険を省みず」という言葉と「自衛隊自体が“実力”となる」べきことが入っていました。また、衆議院議員の挨拶では、自衛隊員に課された「新しい任務」についての言及があったので、もちろん先発隊の出発を踏まえての発言だったのでしょう。議員は、「国家の最大の使命は、国民のいのちとくらしを守ること」と言っており、私も本当にそうだと同意しますが、自衛隊の任務がそれに直結しているかどうかは、私たち国民がよくよく精査する必要があると思います。


 



★「愛妹(あいまい)」の由来については、こちらをお読みください。

 

 

★連載第1回「防衛省市ヶ谷台ツアー」
★連載第2回「陸上自衛隊広報センター「りっくんランド」」
★連載第3回「海上自衛隊第1術科学校
★連載第4回「平成27年度富士総合火力演習」
★連載第5回「防衛大学校見学ツアー」
★連載第6回「アメリカ海軍兵学校見学ツアー」
★連載第7回「航空自衛隊浜松広報館「エアーパーク」」
★連載第8回「艦艇公開 護衛艦さみだれ」
★連載第9回「アニメ『ガールズ&パンツァー』」
★連載第10回「海上自衛隊呉史料館「てつのくじら館」」
★連載第11回「航空自衛隊春日基地見学」
★連載第12回「陸上自衛隊久留米駐屯地一般開放」
★連載第13回「大刀洗平和記念館と戦跡めぐり」
★連載第14回「防府南基地・開庁記念行事」

★連載第15回「防府航空祭2016」
★連載第16回「自衛隊夏まつり・盆踊りフェスタ」
★連載第17回「佐世保地方隊サマーフェスタ 2016」
★連載第18回「平成28年度自衛隊記念日観閲式」

 
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 [プロフィール]
すどうのりこ/1969年生まれ。横浜市立大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。メディア学、文化政治学。現在、筑紫女学園大学現代社会学部准教授。著書に、『自衛隊協力映画――『今日もわれ大空にあり』から『名探偵コナン』まで』(大月書店、2013年)。

 

 

※この連載は、日本学術振興会科学研究費助成事業挑戦的萌芽研究「自衛隊広報のエンターテインメント化に関するフィールドワーク研究」(平成27年度~29年度)の成果を一部発表するものです。

 

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