【web連載】須藤遙子「愛妹通信―自衛隊広報レポート」第21回

芦屋基地体験搭乗


愛妹。1月は本当にあっという間に過ぎていきますね。冬は自衛隊のイベントが少なくなるので、今回はまだあなたに話していなかった、昨年8月27日に開催された航空自衛隊芦屋基地での一般市民対象のヘリコプター体験搭乗について書きたいと思います。

応募期間は7月1日から29日までで、往復ハガキでの申し込みでした。抽選で当選した80名がいくつかの時間帯に振り分けられ、20分ほどのヘリコプター飛行を体験しました。


当選ハガキ

 

福岡県北部にある芦屋基地は、戦中の1942年に芦屋陸軍飛行場として誕生し、敗戦に伴ってアメリカ軍に接収され、朝鮮戦争のときには爆撃機や輸送機の基地として使用されていたそうです。

敷地に入ると、歴代使用されてきた飛行機がいくつも屋外展示されている区画がありました。1968年公開の自衛隊協力映画『ジェットF104 脱出せよ!』のF104戦闘機をはじめ、T33A練習機やH19救難ヘリコプターなど、子どもやマニアが喜びそうな、今見ると牧歌的にさえ感じる丸っこいかたちの飛行機やヘリコプターが並んでいましたよ。


昔の救難ヘリコプター

 

用意されていたバスに乗って敷地内を移動し、体験搭乗が行われる滑走路に向かいました。一般の空港よりはずっと小さいのでしょうが、体験搭乗のヘリコプター以外に飛行機の姿はなく、建物も小さなものがポツポツと建っているだけなので、とても広く感じましたね。占領時のものと思われる建物が、今でもそのまま使われているのも見ました。

受付をすると、黄色いイヤーマフと、番号の書かれたペンダント状の認識票を渡されます。ヘリコプターは非常に大きな音がし、そのままでは耳を痛める危険があるので、滑走路に出てから搭乗が終わって建物に戻るまでは絶対にマフを外さないこと、と注意を受けました。

ドッグタグと呼ばれる認識票は、米軍のパイロットを描いた大ヒット映画『トップガン』で、主人公を演じたトム・クルーズがしていたものと同じ形状です。墜落した際に人物を特定するためのものなので、少し緊張しましたよ。


飛行時に身につける認識票


体験搭乗したヘリコプターはCH-47Jで、春日基地の休日見学でも中に入ったことのある大きな輸送用ヘリコプターです。

しかし、格納庫に入っているときと滑走路でプロペラが回っているときとは、やはり全く印象が違います。動いていないときは、巨大な動物のお腹に入ったような茫洋とした感じでしたが、キーンという高音を伴う巨大な音を立ててプロペラが回っていると、とても迫力があって怖かったですね。


体験搭乗へと向かう参加者

 

係の隊員の指示に従ってヘリコプターの後方部から乗り込み、両側のベンチに全員が座ってシートベルトを締めたら、いよいよ出発です。

ヘリコプターの離陸は飛行機と違って、当たり前ですが助走がありません。これという感覚もなくほんの少し浮き上がり、その場で半周くらい向きを変え、ゆっくりと高度を上げていきました。ふだんはもっと早く高度やスピードを上げるのだとは思いますが、とてもスムーズで感心しました。

ほどなくして規定の高度に達すると、なんとシートベルトを外して歩き回っていいという案内がありました。愛妹、これには本当に驚きましたよ!

参加者はもちろん喜んで立ち上がり、前方後方あちこちの窓からの景色を眺めたり、カメラやスマートフォンで撮影したりしていました。特に出入り口となっている後方部は、ネットがかけられているだけで開け放されているので、ダイナミックな景色を見ることができましたね。

とにかく大きなヘリコプターなうえに、輸送目的で作られているため中央部には座席が無いので、20名くらいがうろうろしていても全く問題ないのです。

当日はよく晴れて風もなく絶好の搭乗日和で、参加者は無料の遊覧飛行を存分に楽しんでいて、迷彩に塗られた軍事ヘリコプターに乗っていることを忘れてしまいそうになりましたよ。


飛行中の様子


今月20日に、ドナルド・トランプ氏が第45代アメリカ合衆国大統領に就任しました。トランプ大統領はアメリカ第一主義を掲げ、経済政策ではTPP離脱を宣言、軍事政策でも「世界の警察」としてのアメリカの役割を大きく変えようとしています。アメリカの同盟国である日本は、もちろんその影響を大きく受けることでしょう。

この大きな変化に対して日本あるいは自衛隊がどのように対応していくのか、私たち国民一人ひとりがしっかりと判断しなくてはいけません。愛妹、私はこれを対米追従の日本の態度を変える大きなチャンスにもなりうると考えているのですが、あなたはどう思いますか?

 


 



★「愛妹(あいまい)」の由来については、こちらをお読みください。

 

 

★連載第1回「防衛省市ヶ谷台ツアー」
★連載第2回「陸上自衛隊広報センター「りっくんランド」」
★連載第3回「海上自衛隊第1術科学校
★連載第4回「平成27年度富士総合火力演習」
★連載第5回「防衛大学校見学ツアー」
★連載第6回「アメリカ海軍兵学校見学ツアー」
★連載第7回「航空自衛隊浜松広報館「エアーパーク」」
★連載第8回「艦艇公開 護衛艦さみだれ」
★連載第9回「アニメ『ガールズ&パンツァー』」
★連載第10回「海上自衛隊呉史料館「てつのくじら館」」
★連載第11回「航空自衛隊春日基地見学」
★連載第12回「陸上自衛隊久留米駐屯地一般開放」
★連載第13回「大刀洗平和記念館と戦跡めぐり」
★連載第14回「防府南基地・開庁記念行事」

★連載第15回「防府航空祭2016」
★連載第16回「自衛隊夏まつり・盆踊りフェスタ」
★連載第17回「佐世保地方隊サマーフェスタ 2016」
★連載第18回「平成28年度自衛隊記念日観閲式」
★連載第19回「出雲駐屯地創立63周年記念行事・市中パレード」

★連載第20回「自衛隊広報としての『シン・ゴジラ』」

 
--------------------------

 

 

 [プロフィール]
すどうのりこ/1969年生まれ。横浜市立大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。メディア学、文化政治学。現在、筑紫女学園大学現代社会学部准教授。著書に、『自衛隊協力映画――『今日もわれ大空にあり』から『名探偵コナン』まで』(大月書店、2013年)。

 

 

※この連載は、日本学術振興会科学研究費助成事業挑戦的萌芽研究「自衛隊広報のエンターテインメント化に関するフィールドワーク研究」(平成27年度~29年度)の成果を一部発表するものです。

 

SHARE シェアする

このエントリーをはてなブックマークに追加