【web連載】須藤遙子「愛妹通信―自衛隊広報レポート」第23回

陸上自衛隊音楽隊 定期演奏会

 


愛妹。今回は、全国で頻繁に開催されている自衛隊音楽隊によるコンサートについて書きますね。

 

当日もらったパンフレットを見ると、音楽隊の目的は「演奏を通じて厳しい訓練に励む隊員やその家族を励まし、また、災害等における被災者の激励や外国軍人が来訪した際の演奏など幅広い分野で活動」し、「各自治体や諸団体の公的行事にも参加して、地域の皆様との交流を深め」ることのようです。

 

自衛隊の音楽隊というと、ここ数年では「歌姫」としてブレイクした三宅由佳莉三等海曹が有名ですが、音楽隊は陸・海・空それぞれにあり、全部で32もの隊が活動しています。
内訳を見ると、陸上自衛隊には防衛大臣直轄の中央音楽隊、北部・東北・東部・中部・西部の5つの方面音楽隊、師団・旅団に所属の15の音楽隊で合計21、海上自衛隊には東京音楽隊と横須賀・呉・佐世保・舞鶴・大湊の地方総監直轄部隊の合計6、航空自衛隊には航空中央音楽隊と北部・中部・西部・南西の方面音楽隊の合計5、となっています。

 

このうち、私はアクロス福岡シンフォニーホールで平成28年9月17日に開催された「陸上自衛隊第4師団第4音楽隊第41回定期演奏会」に行きました。



 

演奏会は無料ですが、これまで行った自衛隊のイベントと同じように、事前に申し込みをして券を入手しました。
やはり人気が高く、会場は満席でしたよ。

 

後援には「福岡県教育委員会、福岡市・福岡市教育委員会、読売新聞社、毎日新聞社、西日本新聞社、朝日新聞社、産経新聞社、NHK福岡放送局、九州朝日放送、RKB毎日放送、TNCテレビ西日本、FBS福岡放送、TVQ九州放送、日本吹奏楽指導者協会九州支部、第4師団後援会拳振会、福岡県自衛隊協力会連絡協議会、福岡県防衛協会青年会連絡協議会、福岡県防衛協会女性部会、第4音楽隊後援会」と地元自治体、地元メディアの名前がずらりと並んでいます。
つまり、自衛隊協力映画と同じように、一般的に言われるようないわゆる右寄り・左寄りといったメディアの傾向などは関係ないことがわかりますね。



 


演奏会のテーマは「未来への絆」で、2部構成となっていました。
第1部では「東京オリンピックマーチ」「サクソフォーン小協奏曲」「アソングフォージャパン」「ふるさと」「フェスティバル・バリエーション」の5曲、第2部では「SF交響ファンタジー第1番」「シング・シング・シング」「ユーミンポートレート」「花は咲く」の4曲が演奏されました。

 

通常のクラシックコンサートといちばん違うのは、演奏者が制服を着ていることでしょうね。
演奏用の特別な制服なのでしょうが、当然ながら燕尾服やロングドレスではないので、屋外演奏を見たときは何も感じませんでしたが、屋内のコンサートホールでは違和感を覚えました。

 

演奏は、さすがに粒が揃ってきちっとまとまっており、練習というよりは「訓練」の成果かなと思いましたよ。



陸上自衛隊第4師団ホームページより http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/4d/katudou/h28/28-17.html

 

 

「東京オリンピックマーチ」はアジア初のオリンピックとなった1964年の東京大会のために作曲されたもので、君が代の一節が取り入れられていました。
「アソングフォージャパン」と「花は咲く」は、東日本大震災のチャリティー曲で、特に「花は咲く」は「NHK東日本大震災プロジェクト」のテーマソングとしてよく知られた曲です。
九州では2016年4月に熊本地震で大きな被害を受けたので、震災関連の曲が2曲もラインナップしていたのでしょう。

 

「SF交響……」は『ゴジラ』の作曲者として有名な伊福部昭の作品で、『ゴジラ』を含む7つの特撮映画の劇中音楽が次々に演奏されました。
大ヒットした自衛隊協力の『シン・ゴジラ』で使われていたこともあり、会場がいちばん盛り上がり、演奏のキレも良かったように思いました。

 

「フェスティバル……」はアメリカ空軍軍楽隊の委嘱による吹奏楽曲、アンコールで演奏された「それいけ若鷹軍団」「君が代行進曲」も勇壮な軍歌で、まさに自衛隊の音楽隊が演奏するための曲と言えますが、愛妹、これらの曲調は大日本帝国時代から少しも変わっていないので、そのあまりに無批判な明るいメロディーと会場の手拍子には不安と落胆を感じましたね。

 





会場のすぐ前にある天神中央公園では、当日「九州ヒューマンフェスタ」という産学官の共同イベントが開催されており、自衛隊も隊員募集の広報ブースを出していました。
陸上自衛隊のオートバイやトラックなども展示されており、福岡での自衛隊の活動を示す写真や『シン・ゴジラ』を使ったポスターなどが貼られていました。
コンサート会場ではさすがに自衛官募集の案内はされていなかったので、このイベントと組み合わせての広報活動だったのでしょう。

 




 

福岡地方協力本部のゆるキャラである「ピコット」の着ぐるみが3分の1ほどを占めたテントでは、中学生くらいの女の子たちが真剣に説明を聞いていましたよ。
福岡はとても吹奏楽が盛んな土地のようなので、コンサートを聴きに来た若い子が音楽隊に憧れてブースを訪れたのかなと思いました。
しかし音楽隊の所属でも、最低限の自衛隊員としての訓練は受けなければならず、有事となれば相応の活躍が求められることになるでしょう。

 

耳に残る明るいメロディーと、彼女たちの無邪気な眼差しに、むしろザワザワと落ち着かない気持ちになったのでした。


 



★「愛妹(あいまい)」の由来については、こちらをお読みください。

 

 

★連載第1回「防衛省市ヶ谷台ツアー」
★連載第2回「陸上自衛隊広報センター「りっくんランド」」
★連載第3回「海上自衛隊第1術科学校
★連載第4回「平成27年度富士総合火力演習」
★連載第5回「防衛大学校見学ツアー」
★連載第6回「アメリカ海軍兵学校見学ツアー」
★連載第7回「航空自衛隊浜松広報館「エアーパーク」」
★連載第8回「艦艇公開 護衛艦さみだれ」
★連載第9回「アニメ『ガールズ&パンツァー』」
★連載第10回「海上自衛隊呉史料館「てつのくじら館」」
★連載第11回「航空自衛隊春日基地見学」
★連載第12回「陸上自衛隊久留米駐屯地一般開放」
★連載第13回「大刀洗平和記念館と戦跡めぐり」
★連載第14回「防府南基地・開庁記念行事」

★連載第15回「防府航空祭2016」
★連載第16回「自衛隊夏まつり・盆踊りフェスタ」
★連載第17回「佐世保地方隊サマーフェスタ 2016」
★連載第18回「平成28年度自衛隊記念日観閲式」
★連載第19回「出雲駐屯地創立63周年記念行事・市中パレード」

★連載第20回「自衛隊広報としての『シン・ゴジラ』」
★連載第21回「芦屋基地体験搭乗」
★連載第22回
「呉入船山記念館」

 


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 [プロフィール]
すどうのりこ/1969年生まれ。横浜市立大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。メディア学、文化政治学。現在、筑紫女学園大学現代社会学部准教授。著書に、『自衛隊協力映画――『今日もわれ大空にあり』から『名探偵コナン』まで』(大月書店、2013年)。

 

 

※この連載は、日本学術振興会科学研究費助成事業挑戦的萌芽研究「自衛隊広報のエンターテインメント化に関するフィールドワーク研究」(平成27年度~29年度)の成果を一部発表するものです。

 

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