【web連載】須藤遙子「愛妹通信―自衛隊広報レポート」第26回

エアーメモリアル in かのや 2017


愛妹。今回は、4月29日と30日の2日間にわたって鹿児島県で開催された「エアーメモリアル in かのや 2017」のことを書きますね。ホームページによれば、「航空ショーをメインに開催される南九州最大級のイベント」です。

海上自衛隊鹿屋航空基地で行われるので、当然ながら自衛隊主催のイベントかと思っていたのですが、「自衛隊・地域住民・行政の協力」による「鹿屋市の3大祭りの1つ」であり、かのやイベント協議会という実行委員会が主催となっています。

このイベントは、1994(平成6)年に海上自衛隊鹿屋航空基地の開隊40周年を記念して始められて以来、「鹿屋航空基地と大隅地域の円滑な協調関係の更なる醸成」と「大隅半島の地域振興を図ること」を目的として続けられており、今年で第22回となります。

私は前回書いた岩国フレンドシップデーのときと同様に、博多からのバスツアーで参加しました。博多から鹿屋まではほぼ九州を縦断することになり、直線距離で250キロもある移動となるので、今回は深夜の出発となりました。

40名ほどのバスの客は、8割がたが70代と思われる男性でした。深夜バスの乗客は若い人が多いのだろうと思い込んでいたので、少々意外でしたね。

鹿屋航空基地は非常に交通の便の悪いところにあり、電車や飛行機を使っても結局はバスに1、2時間乗らなくてはならないので、1万円ほどのバスツアーが最も安価で便利ということになります。年金暮らしの老人にとっては、ちょうどいい楽しみなのかもしれません。

大きなカメラを大事そうに抱えている人が多くいましたよ。このツアーでも、いわゆる「軍事・飛行機マニア」と思われる人は、数えるほどしかいませんでした。

1936年に日本海軍鹿屋海軍航空隊が創設されて以来、鹿屋航空基地は特攻隊の出撃基地としての役割を果たしてきました。

私たちのバスが開門の朝7時ぴったりに一番乗りしたのですが、まだ人気のない基地の中を歩いていると、広々とした滑走路の奥にあるなだらかな丘の稜線がよく見え、当時の特攻隊員たちはどんな気持ちでこの光景を眺めていたのだろうとふと思ったりしました。

8時からオープニングセレモニーが始まり、航空学生によるファンシードリル、航空自衛隊T-4の飛行展示、陸上自衛隊第1空挺団落下傘降下展示などに加え、民間機によるアクロバット飛行などが行われました。特に、海上自衛隊の大型哨戒機P-3Cによる機動展示は、国内ではここでしか見られないというこのイベントの目玉で、2機の飛行機が中央の1機と至近距離でクロスする飛行は迫力がありましたね。






しかし、このイベントで私がいちばん印象に残ったのは、「体験入隊」したゆるキャラたちでした。昨今ではどんな小さな自治体にも必ず一体はゆるキャラがいるような印象ですし、独自のゆるキャラを持つ企業も多いので、全国では数千にものぼるのでしょうか。今回のエアメモに集まったのは鹿児島県内のゆるキャラで、20体ほどが来ていたようです。

行進訓練では、彼らがおもしろおかしくズッコケたり怠けたりしながら歩くのですが、私にはどうにも不気味に感じられました。愛妹、猫も杓子もこぞってゆるキャラを制作し、無批判にそれを受容しおもしろがることは、ナショナルなものへの迎合と実は驚くくらい似てはいないでしょうか。戦争を推進していった付和雷同、寄らば大樹の陰、という傾向を、私はゆるキャラに見てしまうのです。

自衛隊にももちろんゆるキャラがいくつかあり、このイベントでも子どもたちと一緒に写真に収まっていました。自衛隊の実際の活動や装備品、安保法制や共謀罪法案の強行採決などの政治的側面に注意しなければならないのは当然ですが、私はこういうポピュラー文化を使った心理効果のようなものに、警戒心を抱かずにはいられません。





基地の入り口近くに併設されている鹿屋航空基地史料館にも行きました。ここは自衛隊の大型広報施設の一つで、前に書いたようにとても不便な場所にもかかわらず、1973年末から1991年までの旧史料館の来館者数は約84万人、リニューアルオープンした1993年7月から2016年末までの来館者数は約176万人となっています。

屋外には、世界一高性能の大型飛行艇といわれた二式大艇をはじめ、歴代のヘリコプターや練習機などが多数展示されています。館内には戦中から現在までの史料が展示してあり、特に特攻隊員の遺品・遺書や零戦の実機の展示で有名です。

遺書は他でも何回も見ましたが、どれも不思議なくらい達筆な字で書かれており、本心でそう思っているのか、そう書かねばならない圧力があったのか、死への潔さと諦観がない交ぜになった文面に、たまらなく無力感を覚えます。



今回のイベントでは、小さい子どもたちが特に目につきました。産業的には決して発展しているとはいえない地域なので、数少ない大きなお祭りとして家族でやってくるのでしょう。

曲芸飛行に無邪気に歓声をあげたり、売店の食べ物を頬張ったりする子どもたちの姿を見ていると、16歳17歳で非業の死を遂げねばならなかった特攻隊の若者たちの写真が思い出され、歴史を再び繰り返すようなことをしてはならないとあらためて思いました。

 





★「愛妹(あいまい)」の由来については、こちらをお読みください。

 

 

★連載第1回「防衛省市ヶ谷台ツアー」
★連載第2回「陸上自衛隊広報センター「りっくんランド」」
★連載第3回「海上自衛隊第1術科学校
★連載第4回「平成27年度富士総合火力演習」
★連載第5回「防衛大学校見学ツアー」
★連載第6回「アメリカ海軍兵学校見学ツアー」
★連載第7回「航空自衛隊浜松広報館「エアーパーク」」
★連載第8回「艦艇公開 護衛艦さみだれ」
★連載第9回「アニメ『ガールズ&パンツァー』」
★連載第10回「海上自衛隊呉史料館「てつのくじら館」」
★連載第11回「航空自衛隊春日基地見学」
★連載第12回「陸上自衛隊久留米駐屯地一般開放」
★連載第13回「大刀洗平和記念館と戦跡めぐり」
★連載第14回「防府南基地・開庁記念行事」

★連載第15回「防府航空祭2016」
★連載第16回「自衛隊夏まつり・盆踊りフェスタ」
★連載第17回「佐世保地方隊サマーフェスタ 2016」
★連載第18回「平成28年度自衛隊記念日観閲式」
★連載第19回「出雲駐屯地創立63周年記念行事・市中パレード」

★連載第20回「自衛隊広報としての『シン・ゴジラ』」
★連載第21回「芦屋基地体験搭乗」
★連載第22回
「呉入船山記念館」
★連載第23回
「陸上自衛隊音楽隊 定期演奏会」
★連載第24回「海上自衛隊佐世保史料館「セイルタワー」」
★連載第25回「岩国フレンドシップデー2017」

 


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 [プロフィール]
すどうのりこ/1969年生まれ。横浜市立大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。メディア学、文化政治学。現在、筑紫女学園大学現代社会学部准教授。著書に、『自衛隊協力映画――『今日もわれ大空にあり』から『名探偵コナン』まで』(大月書店、2013年)。

 

 

※この連載は、日本学術振興会科学研究費助成事業挑戦的萌芽研究「自衛隊広報のエンターテインメント化に関するフィールドワーク研究」(平成27年度~29年度)の成果を一部発表するものです。

 

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