【web連載】須藤遙子「愛妹通信―自衛隊広報レポート」第27回

第56回 静岡ホビーショー


愛妹。自衛隊主催のイベントではありませんが、今回は5月11日から14日まで開催された第56回静岡ホビーショーのことを書きたいと思います。

静岡県には、タミヤやハセガワのような世界的に有名な会社を筆頭に、多くの模型メーカーが存在しています。静岡ホビーショーは国内最大級のプラモデル見本市で、静岡模型教材協同組合の主催により1959年から続いているということです。今年も例年どおり静岡市にある「ツインメッセ静岡」という展示場で開催され、80にものぼる企業や団体が新作プラモデルなどを展示・販売しました。

最初の2日間は業者招待日となっており、一般来場者が入場できるのは後半の2日間で、入場無料なので、見本市とはいえ毎年7万人以上が訪れるというとても大きなイベントです。今年は、陸上自衛隊に今秋に配備される予定の「16(ひとろく)式機動戦闘車」という最新装備品が展示されるというので、新幹線で片道4時間以上もかけて行ってきました。




昼近くに静岡駅に着くと、すでに会場で買い込んできたプラモデルなどが入っていると思われる大きなビニール袋を抱えた男性を何人も見かけました。会場までのバスにはそれほど待たずに乗ることができましたが、車で訪れる人がかなりいるようで、会場付近は結構な渋滞になっていましたね。

会場は北館と南館と大きく2つに分かれていて、北館では模型メーカーがそれぞれブースを出しており、南館では全国のモデラーズクラブの合同作品展が開催されていました。以前書いた『ガールズ&パンツァー』の人気は依然高く、このキャラクターを使った作品をあちこちで見ましたよ。

会場はこれらの作品や各社の新製品を熱心に見てまわる人たちでごった返しており、スマホや高価そうな一眼レフカメラで真剣に写真を撮っていました。子どもや家族連れはとても少なく、20代から60代くらいまでの男性がほとんどで、珍しいとは言わないまでも女性も少なかったですね。






自衛隊のコーナーは、入場者が必ず通過する入り口すぐのところにありました。16式機動戦闘車の周りにはたくさんの人が集まっていて、そばにいる自衛官にあれこれ質問して詳しい説明を受けている人も見かけました。

静岡ホビーショーの公式ホームページの「自衛隊広報コーナー」の説明によると、この新しい戦闘車は「陸海空自衛隊が緊密に連携して有事の際は速やかに目的地へと展開する「統合機動防衛力」の実現に向けて開発された自衛隊の「新たな陸の主役」」だそうです。大きな大砲のついた戦闘車が、小さくはない展示場の入り口をほとんどふさいでおり、ミリタリー模型もたくさん展示されているホビーショー会場とはいえ、やはり異様な感じがしましたね。

近年、バラバラに活動していた陸・海・空の自衛隊が連携することも多くなってきたので、この戦闘車の導入はその流れの一つであるといえるのでしょう。「有事」という言葉がじわじわと現実味を帯びてきているように感じます。16式機動戦闘車のほかには、軽装甲機動車や偵察用オートバイが展示されていました。






車両展示スペースの脇には、顔をはめると自衛官になる顔出し看板や制服やヘルメットなどが試着できる「着せかえコーナー」などがありました。静岡の自衛隊では、静岡地方協力本部の営業部長兼応援団長という設定の「しずぽん」というマスコットキャラクターを使って、いろいろな広報活動がされているようです。

静岡県は、総合火力演習がおこなわれる東富士演習場やエアーパークが隣接する浜松基地もあるので、自衛隊が身近な県の一つだろうと推察されました。屋内の自衛官募集コーナーには、陸・海・空それぞれの広報スペースがあり、模型や制服、活動の写真パネルなどが展示されていましたが、メインのホビーショー会場のような混雑はありませんでしたね。







愛妹。今回は「ミリタリー」が好きな人たちが集まる一般のイベントに行ったわけですが、こうした自衛隊主催ではないイベントに自衛隊の最新装備品が展示されるというのは、やはり考えさせられるものがありましたね。

私たちは「イベント化」される軍事をどう捉えたらいいのでしょうか。これは、あなたへのこの「愛妹通信」の主たるテーマなのですが、単なるいい悪いという倫理的な問題ではなく、あらゆるものごとが消費されイベント化される現代社会そのものに関わる大きな問題だと私は思うのです。



 


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★連載第1回「防衛省市ヶ谷台ツアー」
★連載第2回「陸上自衛隊広報センター「りっくんランド」」
★連載第3回「海上自衛隊第1術科学校
★連載第4回「平成27年度富士総合火力演習」
★連載第5回「防衛大学校見学ツアー」
★連載第6回「アメリカ海軍兵学校見学ツアー」
★連載第7回「航空自衛隊浜松広報館「エアーパーク」」
★連載第8回「艦艇公開 護衛艦さみだれ」
★連載第9回「アニメ『ガールズ&パンツァー』」
★連載第10回「海上自衛隊呉史料館「てつのくじら館」」
★連載第11回「航空自衛隊春日基地見学」
★連載第12回「陸上自衛隊久留米駐屯地一般開放」
★連載第13回「大刀洗平和記念館と戦跡めぐり」
★連載第14回「防府南基地・開庁記念行事」

★連載第15回「防府航空祭2016」
★連載第16回「自衛隊夏まつり・盆踊りフェスタ」
★連載第17回「佐世保地方隊サマーフェスタ 2016」
★連載第18回「平成28年度自衛隊記念日観閲式」
★連載第19回「出雲駐屯地創立63周年記念行事・市中パレード」

★連載第20回「自衛隊広報としての『シン・ゴジラ』」
★連載第21回「芦屋基地ヘリコプター体験搭乗」
★連載第22回
「呉入船山記念館」
★連載第23回
「陸上自衛隊音楽隊 定期演奏会」
★連載第24回「海上自衛隊佐世保史料館「セイルタワー」」
★連載第25回「岩国フレンドシップデー2017」
★連載第26回「エアーメモリアル in かのや 2017」

 


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 [プロフィール]
すどうのりこ/1969年生まれ。横浜市立大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。メディア学、文化政治学。現在、筑紫女学園大学現代社会学部准教授。著書に、『自衛隊協力映画――『今日もわれ大空にあり』から『名探偵コナン』まで』(大月書店、2013年)。

 

 

※この連載は、日本学術振興会科学研究費助成事業挑戦的萌芽研究「自衛隊広報のエンターテインメント化に関するフィールドワーク研究」(平成27年度~29年度)の成果を一部発表するものです。

 

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