【web連載】須藤遙子「愛妹通信―自衛隊広報レポート」第28回

第4師団創立63周年・福岡駐屯地開設67周年記念行事


愛妹。今回は、5月21日に開催された第4師団創立63周年・福岡駐屯地開設67周年記念行事について書きたいと思います。

67周年ということは、1950年に設置された警察予備隊から数えていることになりますね。青森県青森駐屯地、新潟県高田駐屯地、栃木県宇都宮駐屯地、長野県松本駐屯地、香川県善通寺駐屯地、北海道旭川の第2師団などが、それぞれ同年に開設、創立されています。これらのあゆみは、敗戦直後の武装解除から一転、いわゆる「逆コース」といわれる再武装の歴史と重なっていることを示しています。




記念行事は9時から15時までの開催で、最寄りのJRと私鉄の駅からシャトルバスが運行されます。JR南福岡駅から駐屯地までは歩いても15分ほどですが、待つ人もそれほど多くなかったのでバスに乗ってみました。自衛隊員が運転する自衛隊のマイクロバスから降りると、いつものように簡単な手荷物検査があります。

福岡駐屯地は昨年盆踊りフェスタにも行きましたが、駅から近く、マンション群に囲まれた市街地にあり、普段から出勤帰りの制服自衛官を周辺でよく見かけます。会場には多くの人が来ていましたが、印象としては自衛隊員の家族がかなりの割合を占めていたようでした。

制服の隊員と親しげに話す人をあちこちで見かけ、制服姿のお母さん隊員が非番と思われる隊員の父親と子どもたちの写真を撮っている風景も見ましたよ。この地域で生活し、ここで働いている人たちなのなだなぁとあらためて感じました。



記念行事のプログラムは、観閲式、観閲行進、オートドリル、訓練展示、音楽演奏となっていました。多くの戦闘車両や戦車などの行進の合間には、ヘリコプターの編隊も飛んできます。マンションの上をかなり低く飛んでいくので、子どもたちは興奮していましたね。オートドリルでは、偵察バイク10台が至近距離ですれ違ったり、障害を乗り越えたり、円形で回ったりと難しい技術を次々と披露していました。



しかし、今回のイベントで一番印象に残ったのは、訓練展示という名の模擬戦です。敵が上陸したと仮定しての部隊展開を行うのですが、続々と戦闘車両などが定位置について煙幕を張るなど、市街地の駐屯地ならではの妙な迫力があって、結構緊張しました。

空砲とはいえ、FH-70りゅう弾砲や74式が発射するときには、地面が揺れるほどの大きな音がします。ひときわ大きな音がした大砲は「ここから久留米まで届きます」という放送があり、会場がどよめいていました。

福岡駐屯地のある場所から久留米の中心までは、およそ25キロメートルほどです。自分たちが行ったことのある場所だと距離が実感できるので、その威力の凄まじさがよくわかります。




最後のほうで、敵にじりじりと接近していくような演出があったのですが、たまたま私のいた側に敵がいる想定になっていて、銃を構えた自衛隊員がこちらに少しずつ近づいてくるのは本当に恐ろしく、嫌な気分でしたよ。

もちろん銃口は地面のほうに下げてあり、銃に実弾は入っていないにしろ、銃を持って市民に近づいていくというのは正直、無神経すぎると思いましたね。周囲の人たちもちょっと緊張し、なんとなく困ったなぁという雰囲気でした。




駐車場ではいろいろな装備品や車両が展示され、触ったり乗ったりできるものもありました。大分県の玖珠駐屯地に配備されたばかりのAAV7A1という水陸両用車も展示されていましたが、アメリカで製造されているので注意書きが英語で書かれていました。つい先日、防衛省が陸上型の導入を検討していることがわかったイージス・システムもアメリカ製ですが、概算要求で過去最高の5兆2551億円を計上する2018年度予算のうち、一体どれほどのお金がアメリカにいくのでしょうね。愛妹、本当に日本はいつまでアメリカに占領され続けるのかと暗澹たる気持ちになります。






模擬戦などが行われているグラウンドの周囲では、これまでのイベント同様に自衛官の活躍を紹介するパネル展示があり、食べ物や自衛隊グッズを売る模擬店が出ていました。自衛隊グッズのお店は、どこに行ってもかなりの人気です。迷彩柄のTシャツに混ざり、お尻に「ほふくぜんしん」と書かれたベビー服も売られていましたよ。

天気が良く、大きなイベントではないので来場した人たちは皆穏やかに楽しんでおり、その和やかな雰囲気と緊迫感を少しずつ増している国際状況が、なんとも言えぬコントラストをなしていました。





 


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 [プロフィール]
すどうのりこ/1969年生まれ。横浜市立大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。メディア学、文化政治学。現在、筑紫女学園大学現代社会学部准教授。著書に、『自衛隊協力映画――『今日もわれ大空にあり』から『名探偵コナン』まで』(大月書店、2013年)。

 

 

※この連載は、日本学術振興会科学研究費助成事業挑戦的萌芽研究「自衛隊広報のエンターテインメント化に関するフィールドワーク研究」(平成27年度~29年度)の成果を一部発表するものです。

 

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