【web連載】須藤遙子「愛妹通信―自衛隊広報レポート」第29回

大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館)


愛妹。今回は、広島県呉市にある大和ミュージアムのことを書きますね。

これまでに、江田島にある海上自衛隊第1術科学校呉地方総監部第一庁舎てつのくじら館入船山記念館など、呉市にいくつもある海上自衛隊・旧日本海軍関連の施設を紹介してきました。そのなかでも、最も有名で人気のあるのが大和ミュージアムです。

2005年4月23日に開館してから2016年5月末までの来館者数が約1100万人というのは、公式ホームページにあるように、まさに「全国の歴史博物館・科学博物館として画期的なもの」といえます。呉駅から徒歩5分の港のすぐそばに建っており、道を挟んで向かいにはてつのくじら館があります。

大和ミュージアムは、正式名称にあるように呉市の運営であり、自衛隊の施設ではありませんが、海上自衛隊呉教育隊も隣接しており、入船山も地続きなので、その広大な土地すべてが旧海軍、現自衛隊に関連しているといえるでしょう。




大和ミュージアムはその名のとおり、戦争中に呉で建造された、当時の最先端の技術を用い世界最大の戦艦だった大和に関する博物館です。

大和は、戦艦として史上最大の排水量、46センチの主砲3基9門は900発が搭載でき、その飛行距離は42キロメートルもあったと説明がありました。この超巨大戦艦は極秘裏に造られたので、その機密保持はことのほか厳しかったと言われています。

1945年4月7日、沖縄を目指す途中でアメリカの航空攻撃により、乗員3056人と共に撃沈された大和の悲話は、たくさんの手記や小説、映画などで語られているので、あまりにも有名ですね。大和ミュージアムの開館と同じ年の2005年12月17日に公開された、終戦60周年記念の自衛隊協力映画『男たちの大和/YAMATO』の宣伝において、大和ミュージアムも当時ずいぶんメディアに出ていました。




館内展示の中心となっているのが、全長26.3メートルもある戦艦大和の10分の1の模型です。10分の1でこれほどまでの大きさなのですから、実物は想像を絶するものがありますね。吹き抜けになっている広い1階のフロアを造船ドックに見立てて展示されています。

フロアは港に面して大きな窓があり、白い大理石をふんだんに使った豪華な内装で、精巧にできた大和の模型がひときわ華やいだ印象を与えます。ここに飾られた大和の模型は、悲惨な運命など微塵も感じさせない、豪華客船のようなたたずまいでしたね。





大型資料展示室には、いわゆる零戦のほか、人間魚雷として悪名高い特攻兵器「回天」や、同じく特攻目的も考えられていた小型特殊潜航艇「海竜」などが展示されていました。

その他館内では、呉の歴史や造船技術を紹介するコーナーなどもあり、大型模型や写真パネル、映像を駆使した展示がなされています。相当の被害を受けた呉の空襲や広島への原爆投下に関する記載もきちんとされており、戦争の悲惨さを訴え、平和の大切さを謳っている博物館ではあるのですが、軍港都市として栄えた過去のほうが圧倒的に強調されているように感じました。何度か書いていますが、現在の海上自衛隊に受け継がれている「旧海軍の栄光」というニュアンスがどうしても漂います。




ともかくこうした展示内容よりも、町と市という行政規模の違いがあるとはいえ同じ市町村運営の大刀洗平和記念館に比べ、あまりにも施設自体が立派だったことが強く印象に残りました。

平成28年度の呉市の財政を調べると、自衛隊などの基地がある自治体に交付される国有提供施設等所在市町村助成交付金、いわゆる基地交付金と調整金の合計は、約1億2650万円で多いとはとても言えないので、どこから予算が出たのだろうと不思議な気がしました。もっとも、大人の入館料が500円と安くはなく、入館者数は毎年100~80万人前後で推移しているので、十分ペイできているのかもしれませんね。

愛妹、自衛隊や旧海軍の施設があるエリアからほんの少し離れると、呉の街はとても寂れていました。呉駅の反対側は、本当にがらんとしています。大和ミュージアムの立派さと街の寂れ具合は、地方都市の現実をくっきりと写しているようでしたよ。

 

 

 

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 [プロフィール]
すどうのりこ/1969年生まれ。横浜市立大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。メディア学、文化政治学。現在、筑紫女学園大学現代社会学部准教授。著書に、『自衛隊協力映画――『今日もわれ大空にあり』から『名探偵コナン』まで』(大月書店、2013年)。

 

 

※この連載は、日本学術振興会科学研究費助成事業挑戦的萌芽研究「自衛隊広報のエンターテインメント化に関するフィールドワーク研究」(平成27年度~29年度)の成果を一部発表するものです。

 

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