【web連載】須藤遙子「愛妹通信―自衛隊広報レポート」第30回

航空自衛隊岐阜基地


愛妹。今回は、岐阜県各務原市にある航空自衛隊岐阜基地に行ってきましたよ。

ここは1876(明治9)年に陸軍砲兵演習場として開設され、飛行場となったのは1917(大正7)年で今年が100周年、現存する飛行場としては日本で最も長い歴史があるということです。1919(大正8)年にフランス航空団が高度飛行術を伝授しに来日したときに岐阜駅前に建てられた、原寸大かと思われるような巨大な凱旋門のオブジェの前に集まった群衆や、芸者たちと一緒に屋形船で長良川の鵜飼の様子を見物するフランス人の写真などが残っています。

零戦の初飛行も行われたこの「各務原飛行場」は、敗戦により米軍によって接収され、1958(昭和33)年に全面返還されるまで「キャンプギフ」として使用されていました。米軍のキャンプ名には、「キャンプザマ」や「キャンプチトセ」のように、その土地の名前がつくのが通例なのですが、「カカミガハラ」という地名がアメリカ人にはあまりにも言いにくいために、県名である岐阜が使われたのだそうです。


屋外展示の零式三座水上偵察機

他の自衛隊の基地や駐屯地と同様に、事前に申し込んでの見学です。当日正門前の駐車場に着くと小さなマイクロバスが待っていて、全部で6名の参加者が乗り込みました。

各務原在住の参加者は、いつも飛行機の音でテレビも聞こえなくなるけれど、自分は飛行機が大好きだから全然気にならないと話していました。元軍人だったという方も夫婦で参加しており、立派な体格で落ち着いた物腰から、位は低くなかっただろうと推察されました。

ドライバーは航空自衛隊の青い迷彩服を着た自衛官、ガイド役の広報官は制服に広報の腕章をつけており、車両ももちろん自衛隊のものなのですが、正門でしっかりと止められて業務命令書のようなもののチェックがされたのには、ちょっと驚きましたよ。

広報官の説明では、不審者でないことを確認するのはもちろんですが、業務以外の勝手な使用でないことも確かめるのだそうです。今回の広報官は、1992(平成4)年に入隊、この年は国連平和維持活動、いわゆるPKOによって自衛隊が初めて海外に出たことで、入隊半年後には派遣に反対するデモ隊の対応をさせられたと笑っていました。


スライドを使用して説明する広報官

岐阜基地の面積は約400万㎡、長さ2,700m、幅45mの滑走路を持ちます。基地の端から端までは、近くを走る名鉄の駅3つぶんと説明がありました。

2,400名の隊員がいて、これは埼玉県入間基地の4,200名を筆頭に、全国で4番目の多さだそうです。参加者の一人が、戦闘機パイロットは全国で何人くらいいるのかと質問したところ、それは機密だから教えられないとのことでした。いろいろな装備がデータとして公開されているので不思議な気もしますが、秘密にするかしないかの境はなかなか一般市民にはわからないものなのでしょうね。


現在は広報館になっている旧陸軍将校集会所入り口


広報館の横部分

基地内にある広報館は、木造平屋建ての建物で、飛行場が開設された翌年の1918年に旧陸軍の将校集会所として建てられ、1988年までは本部庁舎として使用されていたということです。西洋建築の可愛らしいつくりで、この広報館以外にも近くにいくつか似たような建物が建っています。

半年ほど前にリニューアルされたばかりの広報館はベージュと茶色を基調としていますが、他の建物は米軍に接収されたときに塗られたときのまま、色あせた白地にグリーンの配色が場違いなアメリカンハウスのようで面白かったですね。防衛省の予算がどんどん膨らんでいるにもかかわらず、広報予算は全くないということで、広報館の塗り直しは隊員が行い、かつてのアメリカンハウスはこのままだと朽ち果てるしかないという説明がありました。こうした歴史的な建造物は、ぜひとも残してほしいものですよね。


占領期に塗り直された大正期の建物


旧陸軍マークの鬼瓦

この岐阜基地見学で一番印象に残ったのは、滑走路のすぐそばまで行けることでした。写真が禁止だったのが残念ですが、岐阜基地に配備されているF-15、F-2、F-4、T-4、T-7、C-1、C-2という様々な戦闘機・訓練機・輸送機がすぐ目の前に並んでいるのは圧巻でした。遠くには、国産初のステルス機であるX-2も見えましたよ。

ちょうど私たちが到着したときにF-4が滑走路に向かって動き出したところで、轟音のなかパイロット二人がこちらに向かって手を振るのがはっきり見え、エンジンからの排気をもろに浴びることになりました。さぞかし臭いかと思いきや、いい匂いというと言い過ぎですが、オクタン価が高いためか少し甘いような匂いで、トラックの排気ガスのようにむせるようなことはありませんでした。

戦闘機の飛行前には厳重な点検が行われるのですが、エンジンを動かさないとわからないこともあるので、30分エンジンをつけっ放しで点検、さらに飛ぶ直前には3回マックスでエンジンを吹かすそうです。これを聞いただけでも、戦闘機が1回飛ぶのに多額のお金がかかるのが想像できますね。


初代ブルーインパルスと同じ機体のF-86操縦席

基地内では、ジャージを着た中学生が隊員と一緒に芝生で腕立て伏せをしているのを見かけました。岐阜県内の中学生や高校生が、「総合的な学習の時間」の職場体験としてよく訪れるのだそうです。

文科省によれば、「総合的な学習の時間」は「変化の激しい社会に対応して、自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てることなどをねらいとする」ものということです。自衛隊での職場体験がこうしたねらいとどう結びつくのか私には甚だ疑問でしたが、見学の日は素晴らしい秋晴れだったこともあり、中学生は結構楽しそうでしたよ。


下段に防衛白書が平積みされた基地内コンビニの書籍売り場


基地で売られていたおみやげと自衛隊限定ドリンク「元気バッチリⅡ」

 

 

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★連載第26回「エアーメモリアル in かのや 2017」
★連載第27回「第56回 静岡ホビーショー」
★連載第28回「第4師団創立63周年・福岡駐屯地開設67周年記念行事」
★連載第29回「大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館)」 

 


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 [プロフィール]
すどうのりこ/1969年生まれ。横浜市立大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。メディア学、文化政治学。現在、筑紫女学園大学現代社会学部准教授。著書に、『自衛隊協力映画――『今日もわれ大空にあり』から『名探偵コナン』まで』(大月書店、2013年)。

 

 

※この連載は、日本学術振興会科学研究費助成事業挑戦的萌芽研究「自衛隊広報のエンターテインメント化に関するフィールドワーク研究」(平成27年度~29年度)の成果を一部発表するものです。

 

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