藤井貞和『水素よ、炉心露出の詩』刊行記念対談「水素ちゃんともんじゅ君」その2

 

その1からのつづき)

もんじゅ君 外に出ちゃうとあぶないもんね。

水素ちゃん そういうのも、わかってたの。だからガマンしてたんだけど。

もんじゅ君 あの日、たいへんだったんでしょ?

水素ちゃん そうなの。地震もこわかったよ。津波もこの目でみたんだ。

もんじゅ君 どばーってきた?

水素ちゃん ううん、もっとすごいの。ごごごごって……。プラントがぜんぶ波に埋まっちゃうかと思った。

もんじゅ君 ボクも海のすぐそばに住んでるから、その話をきいたらこわいよ。

水素ちゃん でしょ。冷却水を取り込むために海のそばに建ってるんだよ、ってずっときかされてたのに。

もんじゅ君 ……その海のためにやられちゃった。

水素ちゃん そうだよ。ならべてあった非常用発電機が、いっきに水にのみこまれていって。

もんじゅ君 電源喪失しちゃったんだよね。

水素ちゃん うん。ボクのなかま、1号機も、3号機も、4号機も、それから2号機も、みんなどんどんあっつくなっちゃったんだもん。

もんじゅ君 かなしいね。

水素ちゃん うん。でもそのときはかなしいっていうよりは、必死だったよ。

もんじゅ君 必死?

水素ちゃん 「バクハツしちゃいけない」と思って、みんなで一生けんめい手をつないでたんだよ。でもほんとにいつしか、まわりはともだちでいっぱい。ぎゅうぎゅうになっちゃった。

もんじゅ君 水素のおともだち?

水素ちゃん そう。ジルコニウムが溶けるのも追いつかないくらい、すごい勢いで温度が上がっちゃったの。

もんじゅ君 そっかぁ……。

 

その3へつづく

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